高血圧
高血圧で受診された場合の流れ
- 程度の評価
- お話を聞き、診察などから、必要があれば特殊な高血圧(二次性高血圧)の検索
- 心臓や腎臓などの動脈硬化合併症の評価
- 生活習慣改善と家庭血圧測定の提案
- 改善しない場合はお薬を提案。高度の場合はすぐにお薬をおすすめする場合があります。
大事なこと
- 高血圧を指摘された場合は症状がなくてもほうっておかない
- 健康診断や病院での血圧が正常でも高血圧の場合(仮面高血圧)があるので注意
- 自宅での血圧測定(家庭血圧測定)をすること
(※家庭用血圧計は、上腕で測定するものがおすすめです。手首で測定するものは数値が変動しやすいです)
血圧には、上の血圧と言われる収縮期血圧(心臓が収縮して血を送り出している間の一番高い血圧)と下の血圧と言われる拡張期血圧(心臓が血をためこむ間の一番低い血圧)があります。
血圧の程度は、血管の中の血液の量と血液の流れやすさによって決まります。そのため血液の量が増えたり、流れにくくなることで血圧が上がります。その血圧が基準より高いことを高血圧といいます。
■高血圧の基準
病院で測定する場合は、血圧 140/90以上
自宅で測定する場合は、血圧 135/85以上
*上の血圧あるいは下の血圧のみの異常でも高血圧とします。
*程度によってⅠ~Ⅲ度と分類します。
*血圧の単位はmmHg(水銀柱ミリメートル)です。水銀を血圧計に使用していたこと
からそのような単位となっています。
■なぜ、高血圧が問題なのか?
高血圧がなぜ問題かといいますと、血圧が高いことによって血管を傷めてしまうからです。
高血圧が続くと、血管の壁が硬くなったり弱くなる動脈硬化になります。そのため動脈硬化が進行すると、血管が詰まったり破れて出血します。
具体的には心臓の血管が閉塞する心筋梗塞、脳の血管が閉塞する脳梗塞、血管の破綻による脳出血、腎臓の血管障害による腎機能低下・透析などに至ります。
さらに問題なのは血圧がよほど高くない限り、症状がないまま血管を傷め続けることです。大きな合併症に至って初めて症状があらわれます。そのため、糖尿病などとともにサイレント・キラー(静かな殺人者)と言われています。
*上の血圧が160程度でめまいなどの症状を自覚される方もいらっしゃいますが、200とかなり高くてもあまり自覚症状を感じない方もいらっしゃいます。体が慣れてしまうようです。
高血圧の原因による分類
本態性高血圧・・・体質・遺伝・環境・加齢によって発症するもので特定の原因が不明
二次性高血圧・・・血圧をあげる特殊なホルモンの異常など原因が特定できるもの
原因疾患の治療で血圧が改善する場合がある
*ホルモン・・・ある臓器から分泌され、いろいろな部位・臓器に命令する物質
例:インスリン・・・膵臓から分泌され各組織にブドウ糖を取り込むように働く
*二次性高血圧に関しては別の項で説明します
高血圧のパターンによる分類
病院と家庭での血圧測定の結果で分類します。
病院でも自宅でも血圧の高い普通の高血圧はわかりやすいですが、その他に仮面高血圧と白衣高血圧があります。
●仮面高血圧
かくれ高血圧とも言い、病院では正常血圧ですが自宅などそれ以外で高血圧を認めます。
主に明け方から早朝に高血圧を認めながら、健診や病院で測定する時間には血圧が正常になります。そのため、早朝高血圧とも言います。糖尿病の方、腎臓の悪い方、高齢の方などでよくみられます。血圧を下げる薬を内服していても、早朝高血圧の状態が続くこともあります。また、常に血圧の高い通常の高血圧と同じ程度に動脈硬化を進行させるとされています。仮面高血圧では、病院や健康診断の血圧測定のみでは気づけないことが問題です。
大事なことは、まず把握することです。高血圧を疑う方や治療中の方では、起床時の血圧と寝る前の血圧の1日2回測定が推奨されています。仮面高血圧の場合は、起床時が160/90、病院では120/80、寝る時間には130/80と朝以外は問題がない場合があります。しかしながら、この状態でも動脈硬化や血管の病気を進行させてしまいます。また起床時の血圧が高い場合は、明け方の寝ている間の血圧異常があります。病院での血圧より家庭での血圧の方が、より大きな病気を起こすかどうかに関係します。
そのため、高血圧を疑う方や治療中の方は、起床時と寝る前の家庭血圧を測定することをおすすめします。測定したうえで受診していただくと、よりスムーズに診療を行えると思います。
*家庭用血圧計は、上腕で測るものがおすすめです。手首の測定は簡単ですが数値に変動があります。
*血圧は座った姿勢で落ち着いてから測定してください。
*起床時の測定は、排尿を我慢している場合は血圧に影響するので排尿後に測定してください。
●白衣性高血圧
仮面高血圧とは逆に病院では高血圧ですが、それ以外では正常な場合です。
白衣を見たとき、つまり病院などストレスのあるときだけ血圧が上昇する高血圧です。ストレスがあるとき以外は血圧が正常なので、やっかいな仮面高血圧と比べると動脈硬化への影響はかなり低く、正常血圧と同じレベルです。
しかしながら、1日中ストレスが多くかかる状況にある方は注意が必要と考えられます。状況を把握するためにはご自身での血圧測定が必要です。例としてよくあるのが、仕事中にのみ血圧が高い場合です。仕事をしている時間は1日の約1/3を占めるので、その場合は治療を検討します。退職をされると仕事中はもちろん、普段の血圧も改善する方もいらっしゃいます。
また、仮に病院のみの高血圧だとしても、白衣性高血圧の方は普通の高血圧へ移行する可能性が高いので、やはり定期的な家庭血圧測定をおすすめします。
高血圧の生活習慣改善と治療については次の項目に記載します。