糖尿病の分類
受診の流れ
- 採血結果で糖尿病を診断します。必要であれば、再検査や糖負荷試験を行い診断します。
- 生活習慣の改善(食事や運動など)を提案します。程度によっては早期の治療を検討します。
- 現状の合併症の評価を行います。網膜症の評価のため眼科を紹介させていただきます。
大事なこと
- 症状がなければ大丈夫という病気ではありません。症状が無くてもほうっておかないようにしてください。
- できる範囲で生活習慣の改善をしましょう。何ができるか、できないかを一緒に相談していきましょう。
なぜ糖尿病になるのでしょうか。ヒトは食事を食べたとき、主に炭水化物(米やパン、麺など)を分解して糖分として腸で吸収します。その糖分を肝臓にためたり、筋肉や全身の細胞に取り込んでエネルギーの材料とします。この取り込みを行うためには、インスリンというホルモンが必要です。インスリンは膵臓という臓器で分泌されて、血糖値の調整をおこなっています。そのため、インスリンが足りなかったり、インスリンが作用しないと血糖値が上がり糖尿病になります。
糖尿病には主に二つのタイプがあります。
一般的な2型糖尿病から説明をします。
Ⅰ.2型糖尿病・・・糖尿病と診断される方の多くがこちらです。
糖分・カロリーの摂取量(食事量)が消費量(運動や筋肉などの体内での代謝)を上まわると、糖分が余った状態になります。その糖分過多に対して必要なインスリンが分泌できない状態が糖尿病です。
それだけではなく、血糖値が高いことでインスリンが効きにくくなり、余計に血糖値が高くなります。また、血糖値が高いことで膵臓を疲れさせてしまい、インスリンを分泌する力も減らしていきます。糖尿病の治療ではこれらの悪循環を断つことが必要です。
食べすぎのイメージのある糖尿病ですが、日本人の場合は元々インスリン分泌量が少ない体質の方が多く、肥満のない方や米国人と比較して軽度の肥満でも糖尿病になることが多くあります。人生で一度も肥満になったことのない、やせ型の方でも2型糖尿病を発症することがあります。
Ⅱ.1型糖尿病・・・2型と比較して少ないですが、年齢や生活にかかわらず発症する可能性があります。
2型がインスリンの相対的な分泌不足を認めるのに対して、1型はインスリンの完全な分泌不足です。主に自己免疫反応(ばい菌や異物と間違えて自分の臓器をこわしてしまう反応)により、膵臓を破壊してしまい、インスリンを作る細胞をこわしてしまいます。その結果、インスリンが完全に不足してしまいます。そのため、インスリンを補充しなければ命にかかわる病気です。
比較的短期間で膵臓を破壊し、発症する場合が多いですが、緩徐に10年以上かけてインスリン分泌量が減っていく場合もあります。
1型の場合は、高血糖による尿量増加、口渇感、下痢などの胃腸炎症状、意識障害などの症状をきっかけに診断に至ることも多い病気です。
Ⅲ.その他の糖尿病・・・特殊な原因のある糖尿病です。
血糖を下げるホルモンはインスリンだけですが、血糖を上げるホルモンは数種類あります。それらの血糖を上げるホルモンが異常に分泌される病気の場合は、血糖値が上がり糖尿病を発症することがあります。その場合は、原因となる病気の治療で糖尿病の改善も期待できます。そのため、まずは診断することが大切です。
他には、ステロイドという異常な免疫反応(ばい菌や異物と戦うシステム)をおさえる薬の副作用で糖尿病を発症する場合があります。それでもステロイドはある種の病気には絶対的に必要な薬剤です。また、急にやめると強い副作用が出ることがありますので、勝手にやめることは危険なことを知っておいてください。
それ以外の薬剤でも糖尿病を発症する可能性のあるものがあります。
【備考】
*1型糖尿病は経過などから診断はしやすいのですが、当初は胃腸炎のような症状のみで診断に至らない場合があります。また急激な発症の高度高血糖状態で発見されることが多いため、すぐに治療が必要になります。ほとんどの場合は入院治療が必要な状態です。
*2型糖尿病と診断していても、原因のある「その他の糖尿病」の可能性があります。特殊な治療や薬の変更・調整による改善が期待できるため、常にその可能性を念頭に置く必要があります。
*当初は2型糖尿病と診断していても、緩徐に進行する1型糖尿病の可能性もあります。その場合は、早期のインスリン治療が進行をより緩徐にすると言われており、診断時には念頭に置いて検査をすることが必要です。