尿蛋白(たんぱく)
診療の流れ
➀尿蛋白が陽性の場合は、再度尿検査を行います。尿の濃さの評価も行い、実際に病的な量の尿蛋白が出ているかを評価します。病的な量と判断した場合は蓄尿検査をして頂くことがあります。1日分の尿を自宅で貯めていていただき、実際尿蛋白がどのくらい出ているのかを評価します。
②尿蛋白が多く、糸球体腎炎(腎臓・糸球体を壊していく病気)が疑われる場合は採血にて特殊な異常がないかの評価もします。
③これらの検査にて評価し、糸球体腎炎の可能性が高い場合は、腎生検といって腎臓の組織を一部採取する検査を相談させていただきます。危険性もゼロとは言えず、入院も必要になりますので、その場合はしっかりと説明させていただき、同意・希望があれば連携先の病院に検査を依頼させていただきます。また、程度が軽い場合は経過観察することもあります。
④高血圧や糖尿病による尿蛋白の場合は、その治療の徹底で改善を目指します。
*健康診断時の水分不足やその日の調子の影響で尿蛋白陽性になることもあります。そのため健康診断などで尿蛋白が陽性でも腎生検が必要になる可能性は高くはありません。
大事なこと
・進行しないと症状が出現しない病気の可能性があります
・調子が悪くないから大丈夫とほうっておかず、尿蛋白陽性が指摘された場合は必ず受診するようにしてください。
腎臓(じんぞう)の病気について
腎臓の病気は、急に悪くなる場合とゆっくり悪くなる場合があります。急に悪くなる場合はむくみや倦怠感などの症状も出ることが多く、病院を受診して診断・治療につながります。一方、ゆっくり悪くなる場合(30年以上かかることもあります)は、症状が高度ではなく、かなり悪くなってから病院を受診される場合もあります。
急に悪くなる場合は、治療により改善する可能性があります。しかしながら、ゆっくり悪くなった場合は腎臓の状態、特に糸球体や尿細管(腎臓の構造や機能について参照)が砂漠のような状態になっており、治療しても改善しない可能性が高くなります。そのため、ゆっくり悪くなる病気の場合は、症状が出ない段階で発見・治療する必要があります。
腎臓の働きを徐々に落とす病気に、糖尿病や高血圧が有名です。それ以外にも糸球体腎炎といって糸球体に炎症(壊していく反応)を起こして破壊していく病気があります。
慢性糸球体腎炎といって、ゆっくりと糸球体を壊していく腎炎の場合は原因によりますが30年以上かけて徐々に進行することもあります。透析という特殊な治療が必要なぐらい悪くなって初めて病院を受診されることもあります。その場合は、透析や腎移植しか治療がないことになります。
それでは困るので、早期に、治療ができる段階に発見しようということで、健康診断や人間ドッグなどに尿検査があります。糸球体腎炎を発症すると尿蛋白が陽性になります。多くの糸球体腎炎では血尿も陽性になり、診断の参考になります。
尿蛋白の検査は、テステープといって尿につけるテープの色の変化で判定します。
尿蛋白 -、±、+、2+、3+、4+と程度の評価ができます。
尿蛋白が陽性の場合でも、必ず糸球体腎炎というわけではありません。
熱が出た時や水分不足で尿が濃くなった場合にも陽性になることがあります。また、体の姿勢により尿蛋白が陽性になる体質の方もいらっしゃいます。珍しい場合では膀胱がんなどでも尿蛋白が陽性になることがあります。
しかしながら、自己判断は困難ですので、健康診断などの尿検査で異常を指摘された場合は、症状がなくてもほうっておかないようにして下さい。