認知症
認知症が心配で受診された場合の流れ
- 質問票のテスト
- 原因となる内服薬がないか確認
糖尿病薬による低血糖や降圧剤による血圧低下、睡眠薬の効きすぎなどで認知症のような症状を呈することがあります。
- 血液・尿検査
甲状腺機能低下症や腎不全など認知症のような症状を認める疾患の有無の確認をします。
- 頭部CTやMRI
認知症の原因検索、正常圧水頭症や慢性硬膜下血腫など認知症のような症状を認める疾患の有無を確認します。
*3,4に関しては、治療可能な認知症症状を呈する疾患を発見するために必要です
- 治療を検討します
大事なこと
- 高血圧・糖尿病・高コレステロール血症などのいわゆる生活習慣病の影響があるとされます。できる範囲の予防が大事です。
- 治療可能な疾患でありながら、認知症のような症状を認める病気があります。その場合は、原因治療で改善が期待できます。診断することが重要です。
- 認知症のような症状を認めることがある薬もあります。確認が必要です。
- 早期発見・早期治療にメリットがあるとされます。
認知症について
認知症は一度獲得した認知機能が低下していくものです。主に物忘れ(記銘力障害)などにより日常生活や社会生活に支障をきたします。その結果、徘徊(はいかい)や興奮などいろいろな症状(周辺症状)につながることがあります。いろいろな認知症がありますが、最も多いアルツハイマー型認知症、さらに脳血管性認知症は高血圧・糖尿病・高コレステロール血症などのいわゆる生活習慣病の影響があるとされます。できる範囲の予防が大事です。
治療について
認知症の診療でまず大事なことは、治療可能な疾患やお薬の副作用の除外です。甲状腺機能低下症や正常圧水頭症などが有名です。採血や頭部CT/MRIで診断が可能です。
認知症の治療薬は数種類あります。認知機能の低下に対する薬剤と周辺症状(興奮など)に対する薬剤があります。
認知機能低下に対する薬剤があります。早期に使用することで効果を確認できることが多いとされます。よく効く場合や進行抑制になる場合、あまり効果を感じられない場合などいろいろです。ご本人の自覚だけではなく、御家族・まわりの方が効果に気づくことも大事です。飲み薬の中でも口腔内崩壊錠といって内服する時に水がいらないものや貼り薬もあり、使い勝手がよくなってきています。アルツハイマー型認知症とレビー小体型認知症に使用可能です。効果と副作用を評価しながら治療を継続していきます。
周辺症状(興奮など)はいろいろな症状がありますが、可能であれば原因の把握が大事です。認知症が進行すると便秘で苦しいために興奮してしまう、自分の思い通りにならなかったことで介護への抵抗を認めてしまうなど本人が訴えられない原因がある場合があります。うまく支援してあげて症状が改善すれば後述する薬剤が必要にならない場合があります。改善できる原因がない場合もたくさんあり、その場合は興奮などに対しては抗精神病薬、いわゆる鎮静剤を検討します。誤嚥性肺炎や寝たきりにつながる可能性もあるので、注意深い管理が必要です。
認知症の種類とその特徴
アルツハイマー型認知症の特徴
- 物忘れで発症
- ゆっくりと進行・・・発症時期がはっきりしない
- 局所神経症状がない・・・麻痺や歩行障害がない。そのため、外見上は全く変化がない
- 楽観的
脳血管性認知症の特徴
- 意欲低下や感情失禁(悲しくないのに泣いてしまったり、おもしろくないのに笑ってしまうなど)を認める
- 階段状に悪化・・・階段を下りるように、徐々にではなく急に悪くなるのを繰り返す。
- 局所神経症状があることが多い・・・麻痺や歩行障害など
- 悲観的
レビー小体型認知症の特徴
- 幻覚や妄想が目立つ
- パーキンソン病に伴うふるえ、小刻み歩行、筋肉が動かなくなる症状を認める
- 他の認知症と比較し治療薬への反応が強く、副作用が出やすい。少量での調整が必要になることが多い
前頭側頭型認知症の特徴
- 記憶障害よりも性格変化や行動の脱抑制などで発症することが多い
*行動の脱抑制・・・本能のおもむくままの行動、万引きなどの反社会的行動になることも
- 常同行動を認める・・・同じコースを歩く、必ず決まった椅子に座るなど